星のクッキー

何かの型にはめた時点でそれは、何かの形になっている。


クッキー。そうクッキーの生地は星型に抜いてやることで星となる。

生クッキーは焼かぬままでは食べられない。そのままを口に含み砕き飲み下せるがそれを「食べる」とは言えない。

焼クッキーを噛み砕かずに飲み下すと喉に悪いし消化にも悪い。消化。


消化されゆくものとしてクッキーは型に抜かれたのであるのだろうか。

否である。

是が非でも否である。


星として認識してもらう為に型抜きされ星になった。

「咀嚼 嗜好 栄養 必然 偶然」そのどれにも合致しない存在価値がクッキーにはあった。

星なのだ、星なのだ。その叫びを伝える以外にはそれに存在価値はなかったとも言える。

クッキーは星だろう。クッキーは星である。クッキーは星だった。

クッキーが星であり続けるため元来の生地は星型に抜かれ咀嚼され砕かれ吸収され排泄され記憶となり、忘れられる。


僕らはクッキーを食べたんじゃない。クッキーが星であり続けるための観察者としてそれを咀嚼し云々した。

星になったクッキー。僕らはそれを記憶しいずれ忘れる義務がある。

クッキーを星たらしめるのは僕らであり そうしなければクッキーはおやつなのである。


星型クッキーの5つのとんがりを食べてしまってから残りのしょんぼりした歪なクッキーを眺めるのはいとおかしいと思う。